2010年3月16日火曜日

エティオケタス ウェルトニ Aetiocetus weltoni


Aetiocetus weltoni
漸新世・北アメリカ
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 前回投稿したのと同じ「歯のあるヒゲクジラ」・Aetiocetus属の一種で、保存状態の良い頭骨の化石にはヒゲが生えていたとされる特徴が認められます。
 weltoni種の歯は現生のハクジラの様に全て同じ形になりつつあったものの、それぞれの形はわずかに異なっています。Aetiocetus属のクジラが獲物を捕らえる際には、獲物となる生き物のサイズや習性により(群れか単独か)、ヒゲと歯を使い分けていたと考えられる様です。
 頭部のイラストは復元された頭骨イラストを、全身イラストは足寄化石動物博物館に展示されているA. polydentatusの全身復元骨格を基にして描きました。
 weltoni種は、polydentatus種の頭骨と比べると鼻の位置がより前方にあり、また歯の数も少ない事から、polydentatus種よりも古いタイプの顔付きだったかも知れないと思い、ハクジラ的な顔に描きました。ただ鼻の位置は兎も角Aetiocetus属での歯の数の違いが、現生の進化したハクジラの歯が増えるのと同じ意味なのかは分からないのでそこはちょっとこじつけっぽいですね。
生息時期も、どちらも漸新世後期(チャッティアン)だというところまでしか分かりませんでした。
 全身イラストでは後肢を体の外に出さない様にしましたが、参考にしたpolydentatus種の骨格の通りに描くと出てしまうかも知れません。しかし、この時期のクジラの復元図では後肢を描いているものが無いので、それに倣いました。また、少なくともweltoni種では後肢の化石は発見されていない様なので、描かないのが無難だとも判断しました。
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参考にした資料
・"Skull anatomy of the Oligocene toothed mysticeteAetioceus weltoni (Mammalia; Cetacea): implications formysticete evolution and functional anatomy"
Thomas A. Demere, Annalisa Berta
(Zoological Journal of the Society, 2008)

・追記
考えてみたら、歯が多いのがより進んだ形質だとして、それがハクジラ的な進化と同じとするとpolydentatus種の方をよりハクジラっぽく描かないと筋が通らないですね。

(イラスト・文 meribenni)