2010年5月28日金曜日

カンディアケルヴス Candiacervus sp.

Candiacervus sp.
更新世~完新世・クレタ島
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 クレタ島で発見された固有のシカ・Candiacervus属です。これまでに数種類が知られています。
クレタ島には大型の捕食者がいなかったので、素早く逃げる必要が無い為にこのシカの脚は短くなりました。
安定性が増した体は、山地の環境で生活するのに有利だった様です。
 Candiacervus属最小のropalophorus種以外の種は、気候が温暖化した際に海水面の上昇などによる生息環境の変化を受けて絶滅していったとされます。しかし生き延びたropalophorus種も、恐らくヒトとの接触により絶滅した様です。
 今回のイラストは、ギリシャのMuseum of Palaeontology and Geology of University of Athensに展示する為に作られた復元骨格を基に描きました。
この復元された骨格はCandiacervus属の二番目に小さな種類で、同じ場所・地層で発見された複数のオスの骨と、三種類ある角のタイプの内一つを組み合わせて作られたそうです。
描いた後で、膝を伸ばしすぎたせいで腰が少し高くなっているのがおかしいなと気付きました。また、少し資料を探していたら、このシカの角は先の方が薄く平たかったらしい事が書いてあり、この絵はそこを間違えているのが一番問題かな、という感じです。
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参考にした資料
・"The mounting of a skelton of the fossil species Candiacervus sp. Ⅱ from Liko Cave, Crete, Greece"
(Insular Vertebrate Evolution vol. 12, p.337~346, 2005)
Alexandra Van Der Geer, John De Vos, George Lyras & Michael Dermitzakis
・"Relative growth of the Metapodals in a Juvenile island deer:Candiacervus (Mammalia, Cervidae) from the Pleistocene of Crete"
(Hellenic Journal of Geosciences, vol. 41, p.119-125)
Alexandra Van Der Geer, Michael Dermitzakis & John De Vos
・"Pleistocene Deer Fauna in Crete: Its Adaptive Radiation and Extinction"
John De Vos
(日本熱帯生態学会誌 vo.1, 2000, p.125~134)
(文・イラスト meribenni)
 

2010年5月18日火曜日

デスモスチルス Desmostylus sp.

Desmostylus sp.
中新世・北太平洋沿岸
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 日本を代表する絶滅哺乳類で、現生に子孫を残さず絶えた束柱目に属します。円柱を数本束ねた様な形の非常に特徴的な臼歯を持ち、それが束柱目という名前の由来になっています。

 犬塚則久博士による復元骨格を基にした図(上)と、ドムニング博士による復元骨格を基にした図(下)の2点を描きました。
 犬塚復元は、四肢が体幹から横に張り出した側方型の体型なのに対し、ドムニング復元は四肢が体の下に伸びる下方型の体型に復元されています。
ドムニング復元のイラストを見た知人に指摘された事の中で、「図のように肘を張り出させない状態にすると、指先が外側を向く」というのが面白いなと感じました。

 デスモスチルスの復元といえばすぐに犬塚復元を思い浮かべますが、一般的な哺乳類然とした雰囲気のドムニング復元骨格も一度は見てみたいです。日本には無い様なのでなかなか難しいかもしれませんが。
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参考にした資料
・「絶減哺乳類デスモスチルスの復元」(バイオメカニズム 9, 1988)犬塚則久
・「デスモスチルスの復元 その後」(地質ニュース 421, 1989)犬塚則久
・「絶滅した日本の巨獣」(築地書館, 1989)井尻正二、犬塚則久
・「生体力学モデルと機械モデルによる絶滅哺乳類デスモスチルスの歩行復元」(バイオメカニズム 15, 1999)山崎信寿, 梅田昌弘, 池内康
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(イラスト・文 meribenni)

2010年5月17日月曜日

マストドンサウルス Mastodonsaurus

マストドンサウルス
Mastodonsaurus
三畳紀前期~後期
全長 最大6m



大型の絶滅両生類です。
以前は頭が全身の1/3を占めるような特異なプロポーションで復元されていましたが、現在では、その後に発見された標本等を元に、それほど頭の比率は大きく無かったとされています。上顎の先に開いている穴のうち、前の2つは閉口時に下顎の先端近くの牙が収まっていた、と考えられています。

化石両生類は、現生の両生類を参考に比較的凹凸の無い、滑らかな皮膚で表現される事が多いのですが、マストドンサウルスを含む分椎類の仲間には背中に装甲板のような皮骨が発見されているものもあり、また系統的には現生の両生類ともそれほど近いわけでも無い事を考慮すると、ゴツゴツとした体表だった可能性も考えられるのでは、と思い、今回のイラストもそのように表現してみました。また前後肢の爪は無い表現にしています。
分椎類の上顎表面にははっきりとした溝が認められる事があり、これは何らかの機能を持っていたと思われます。分椎の復元の際には、この溝をどう捉え表現するかもポイントの一つになるかと。

「古脊椎動物図鑑」のマストドンサウルスの項には、「日本にこの類の化石がまだ発見されていないのはさびしい」という著者・鹿間時夫氏のコメントがありますが、その約30年後には日本でも化石が発見されました。なんだか、ちょっと良い話です。

参考資料
・"REVISION OF THE TYPE MATERIAL AND NOMENCLATURE OF MASTODONSAURUS GIGANTEUS (JAEGER) (TEMNOSPONDYLI) FROM THE MIDDLE TRIASSIC OF GERMANY"MARKUS MOSER and RAINER SCHOCH
「The RISE of AMPHIBIANS」
「古脊椎動物図鑑」
「両生類の進化」
「ドラえもんのびっくり古代モンスター」
ドラえもん関連書という事で児童書として扱われる事が多いですが、
古生物本としては非常に情報量の多い内容になっています。

Tyler Keillor "Saharastega moradiensis"

追記(2011年9月11日)
日本で最初に発見された分椎類の論文が発表されました。
"The first temnospondyl amphibian from Japan"
Yasuhisa Nakajima , Rainer R. Schoch

(イラスト・文 ふらぎ)
恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2010年5月6日木曜日

ペドペンナ Pedopenna daohugouensis

Pedopenna daohugouensis
ジュラ紀後期(?)・内モンゴル

 右後肢の膝から先のみが発見されている小型の恐竜です。
中足骨には、Microraprtor guiの様に正羽が生えていた形跡が保存されています。
 今回のイラストは発見されている足先+αを描きました。
Pedopennaは鳥類ではありませんが、少なくとも足だけなら現生の生物では鳥が一番近いと思うので、足先はキジやカラス、ニワトリを、羽の生えている脛などは猛禽類の脚を参考にしています。
描き終えて見直してみると、脛の羽はこんなに長くて妥当なのかとか、脚を伸ばした時に脛の羽と足先の羽はどういう風に重なるのか(そもそも重なったのかどうか)など、全然分からない事が多いなーと思いました。
あと、羽がボロボロ過ぎるかも知れません。
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参考にした資料
恐竜博2005図録
恐竜パンテオン
きまぐれ生物学
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(イラスト・文 meribenni)

2010年5月2日日曜日

アエルログナトゥス Aelurognathus parringtoni

Aelurognathus parringtoni
ペルム紀後期・南アフリカ
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 獣弓目・ゴルゴノプス亜目の仲間で、ほぼ全身の骨格が発見されている種類です。
骨格は同じゴルゴノプス科のリカエノプスによく似ています。
全長約170cmで、化石の胃の辺りからは小型のディキノドンの下顎が発見されている個体もあるそうです。
 今回のイラストは全身復元骨格やふらぎさんに頂いた画像資料を基に、ディキノドンを仕留めた直後の場面を描きました。
全身に毛を生やし、柔らかい頬や唇を持った姿で描きましたが、ここまで体毛が生えていたか・哺乳類的な顔付きだったかは全く分かりません。下顎の頬歯は少し後ろにし過ぎてしまいました。
骨格を見て、犬の様な座り方(お座りの様な姿勢)は出来ないだろうと思い、トカゲの様に地面にべったり座り込む姿勢にしました。
 また、頸肋骨がかなり短く見えたので、首を曲げられるかなと思いその様に描きました。
でも実際に頸肋骨が短いのか、発見されていないから骨をそう復元したのか分からないので、振り返る様な動作が出来たのかは分かりません。
リカエノプスには無理そうに思えるんですが・・・。
 描いている途中で疑問に思った事なんですが、この仲間は目が動かせたのかどうか気になりました。
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参考にした資料
・"The small dicynodont Katumbia parringtoni (von Huene, 1942)(Therapsida: Dicynodontia) from the Upper Permian Kawinga Formation of Tanzania as gorgonopsian prey"
(Palaeodiversity 2, 2009.)
金子隆一
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(イラスト・文 meribenni)