2014年11月24日月曜日

ダルウィノプテルス Darwinopterus




ダルウィノプテルス・モデュラリス
 Darwinopterus modularis
翼開長:0.70.9m 
発見地:中国 
時代:ジュラ紀中期


 :
 ダルウィノプテルスの最大の特徴は、まさしく『ミッシング・リンク』を体現したかのような骨格です。頚椎や頭骨にはプテロダクティルス類の特徴が見られますが、長い足の第五指や長い尾などランフォリンクス類の特徴も見られます。このことから、進化の中間形にあたる種類だと考えられています。
 骨格の特徴と、記載年(2010)がちょうど「種の起源」の出版150周年且つ進化論を提唱したチャールズ・R・ダーウィンの生誕200周年であることから、彼の功績を讃えた学名が名付けられました。
 化石の痕跡から、オスの頭の上には軟組織のトサカがあったと考えられています。また、トサカの痕跡がない個体の化石の腹部から卵が発見されたため、トサカはオスだけの特徴だと判明しました(1)。同時に、翼竜が現在のヘビやトカゲのような柔らかい卵を産むことも分かりました。
 模式種のモデュラリス(D. modularis) 以外にも、頭の長さがやや短いリングロングテエンシス(D. linglongtaensis)と、太い歯を持つロブストデンス(D. robustodens)の、2種類の同属別種がいます。それぞれ頭骨や歯の形状が異なることから、種ごとに食性も違ったと考えられています。奇しくも、ダーウィンが研究したガラパゴス諸島のフィンチ達を彷彿とさせる特徴です。

(1)ただし、体が小さくても卵を産むことができるケースが時々動物に見られるため、未成熟なメスだったという意見もあります。
 (イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)

 :
・主な参考文献
翼竜の謎恐竜が見あげた「竜」図録 福井県立恐竜博物館 P.44-49
(模式種記載論文)

LU, Junchang. "A new boreopterid pterodactyloid pterosaur from the Early Cretaceous Yixian Formation of Liaoning Province, northeastern China." ActaGeologicaSinicaEnglish Edition 84.2 (2010): 241-246.
(リングロングテエンシス記載論文)

Wang, Xiaolin, et al. "New long-tailed pterosaurs (Wukongopteridae) from western Liaoning, China." Anais da Academia Brasileira de Ciências 82.4 (2010): 1045-1062.
(ロブストデンス記載論文)

LÜ, Junchang, et al. "A new darwinopterid pterosaur from the Middle Jurassic of western Liaoning, northeastern China and its ecological implications." Acta Geologica SinicaEnglish Edition 85.3 (2011): 507-514.
(未成熟メスとする説

Hecht, J. (2011). "Did pterosaurs fly out of their eggs?" New Scientist online edition, 20 Jan 2011. (http://www.newscientist.com/article/dn20011-did-pterosaurs-fly-out-of-their-eggs.html)

2014年10月24日金曜日

ケツアルコアトルス Quetzalcoatlus

ケツァルコアトルス・ノルトロピ
Quetzalcoatlus northropi
翼開長:推定10~11m
 発見地:アメリカ(テキサス州)
時代:白亜紀後期
以前は翼開長15mもある、最大の翼竜といわれていましたが、このノルトロピ種に関しては翼の一部しか見つかっていません。その後発見された近縁種や頭骨や体の骨が見つかった同属の小型個体(翼開長5.5m)から推算すると、翼開長は約10m程度だったようです。また、本種よりもハツェゴプテリクスのほうが大きかった(12m)可能性が示唆されています(※ハツェゴプテリクスを同種とする説もあります)
近縁種の骨格から推定すると、非常に長い首と大きな頭を持ち、直立したときの頭の高さはキリン並み(5)だったようです。ただし、首はあまり曲がらなかったようです。
体重については70kgと推定する意見もありましたが、現在は150500kgはあったとする意見が主流となってきています。
 本当に飛べたかどうかも議論があり、現生鳥類の行動学的データを基にした研究によると、巨大すぎて飛べなかったとする説も提唱されていますが、一方でかなりの長距離を飛行移動出来た、という説もあります。
 食性についても、まったくわかっていません。魚食性とする説や、大きな体で陸上を歩き小さな動物や恐竜を捕まえて食べていたとする説などが挙げられています。
(イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)

   復元骨格・テキサス大学記念博物館にて2007年撮影  

  ケツアルコアトルス(種未定)復元骨格
2012年・福井県立恐竜博物館・・特別展にて撮影
 


主な参考資料
・翼竜の謎恐竜が見あげた「竜」図録 福井県立恐竜博物館 P.99-101

・佐藤克文 巨大翼竜は飛べたのか スケールと行動の動物学 平凡社新書
 (飛行できなかったとする説)
 
・Sato, K., Sakamoto, K. Q., Watanuki, Y., Takahashi, A., Katsumata, N., Bost, C. A., & Weimerskirch, H. (2009).  Scaling of soaring seabirds and implications for flight abilities of giant pterosaurs. PloS one, 4(4), e5400.
 (首の骨や食性について)

・Witton, Mark P., and Darren Naish. "A reappraisal of azhdarchid pterosaur functional morphology and paleoecology." PLoS One 3.5 (2008): e2271.

2014年10月13日月曜日

オオツノジカ Megaloceros giganteus



オオツノジカ 
 Megaloceros giganteus
メガロケロス・ギガンテウス
(オオツノジカは和名。学名はMegaloceros giganteus

肩高:2.1m
発見地:ヨーロッパ~北アジア、アフリカ
時代:更新世後期
 

  最終氷期を生きた史上最大のシカ、それがオオツノジカです。その名の通り非常に大きな角をもち、その大きさは横幅3.5m、重さ40kgにもなりました。この大きな角は異性に対するアピールや、同性に対する威圧・闘争に使用されていたようです。
オオツノジカが生息していた時代には新人も生きており、17300年前に描かれたとされるフランス・ラスコーの壁画にはオオツノジカと思われる姿があります。
形態および骨・歯から抽出したDNAを用いた系統解析を行い、オオツノジカがヨーロッパに現在生息するダマジカに近縁である、とした研究結果があります。
オオツノジカは約40万年前に地球上に現れ、約8000年前に姿を消しました。シベリアからは7700年前のものとされる化石が見つかっています。絶滅の原因としては、人類による狩猟や環境の変化など、様々な説があります。
因みに日本にもヤベオオツノジカという大型のシカが生息していました。しかし、こちらはオオツノジカとは別属(Sinomegaceros)です。   
 (イラスト・ふらぎ、文・Kris S.

*今回は、オオツノジカの解説文は、大学で古生物学を専攻する Kris S.さんにお願いしました(ふらぎ)

全身復元骨格・2009年・ブリストル市立博物館にて撮影

主な参考資料
Lister, A.M., Edwards, C.J., Nock, D.A., Bunce, M., van Pijlen, I.A., Bradley, D.G., Thomas, M.G. & Barnes, I. (2005): The phylogenetic position of the 'giant deer' Megaloceros giganteus. Nature 438, 850-853.

2014年9月20日土曜日

アンズー Anzu wyliei



Anzu wyliei
アンズー・ウィリエイ
全長:約3.5m 
発見地:北米
時代:白亜紀後期(6600万年前)

ニワトリのようなトサカを持つ恐竜・オヴィラプトルに近い種類で、このグループの中では比較的大型です。近年、オヴィラプトルの仲間には羽毛が生えていることが判明し、アンズーの体や腕にも羽毛が生えていたと考えられています。
学名には、メソポタミア神話に登場する怪物、「アンズー」の名前が付けられました。その腕はワシの翼のようにたくましく、頭にはライオンのタテガミのように立派なトサカがあり、まさしく「アンズー」の名にふさわしい姿でした。
 化石は泥岩層から発見されたため、海岸平野の湿地に生息していたと考えられています。また、歯のない大きなクチバシを持っていることから、植物や小動物や卵など、なんでも食べる雑食だったようです。 

(イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)


主な参考文献
Lamanna, Matthew C., et al. "A New Large-Bodied OviraptorosaurianTheropod Dinosaur from the Latest Cretaceous of Western North America." PloS one 9.3 (2014): e92022.


2014年2月28日金曜日

ファルカリウス Falcarius

Falcarius utahensis
ファルカリウス・ウタヘンシス
全長:4m
発見地: 北米
時代: 白亜紀前期
 テリジノサウルス類としてはやや小型、腕や前足の爪も、他の種に比べると短いのが特徴です。また、テリジノサウルス類の中では、最も多く化石が発見されている種類で、10個体分の骨格が発見されています。
セグノサウルスなど、後年の進化したテリジノサウルス類は、体を支える後足の指が四本なのに対し、ファルカリウスは三本指でした。これらのことから、現在(20142月現在)発見されている中では、最も原始的なテリジノサウルス類と考えられています。
体の形態も、他のテリジノサウルス類に比べると、比較的身軽で華奢な構造でした。
歯は木の葉状の形をしていることから、植物食と考えられています。ちなみに歯の形は同じく植物食と考えられているインキシボサウルスに類似しています。
標本数が多いため、謎の多いテリジノサウルス類について研究がより進むことが期待されています。


ファルカリウス全身復元骨格
(丹波市・丹波竜化石工房にて撮影)
2013年3月には、ファルカリウスの命名者でもある
ジェームズ・カークランド氏が来館、
自らファルカリウスの解説を行われました>その時の様子。 

: 
主な参考資料 
・Russell, D.A. & Dong Z. (1993). "The affinities of a new theropod from the Alxa Desert, Inner Mongolia, People’s Republic of China". Canadian Journal of Earth Sciences 30 (10): 2107–2127

・Kirkland, James I., et al. "A primitive therizinosauroid dinosaur from the Early Cretaceous of Utah." Nature 435.7038 (2005): 84-87.

・恐竜大陸 展示解説書

「肉食の系譜」


・Zanno, Lindsay E. "Osteology of  Falcarius utahensis (Dinosauria: Theropoda): characterizing the anatomy of basal therizinosaurs." Zoological Journal of the Linnean Society 158.1 (2010): 196-230.

 (イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)


 (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)