2013年9月23日月曜日

エダフォサウルス Edaphosaurus

 Edaphosaurus boanerges
エダフォサウルス・ボアネルゲス

全長:約2.5m
発見地:北米
時代:ペルム紀前期
(エダフォサウルス属としては石炭紀後期~ペルム紀前期)


同時代・同地域で発見されるディメトロドンと対で紹介される事も多い動物。恐竜ではなく、哺乳類に繋がる系統の動物と考えられています。

肉食性のディメトロドンに対し、エダフォサウルスは植物食性とされます。通常の歯だけでなく、上顎口蓋や下顎内側にも多数の粒上の突起があり、すでにかなり高度な植物食への適応があったようです。また、背中の帆に関しても、長く上に伸びた脊椎突起からさらに横方向に小さな棘が多数あり、これもディメトロドンとの容姿の違いの一つになっています。


エダフォサウルスには複数の種類が報告されており、今回は一番良く知られているボアネルゲス種の展示を参考に描いています。

エダフォサウルス・ボアネルゲス
(東京・国立科学博物館にて撮影)



 こちらは、エダフォサウルス・ポゴニアス
(シカゴ・フィールド博物館にて撮影)。

エダフォサウルス属では最大種で、全長約3m。背中の帆は、ボアネルゲスに比べ低めになっています。展示骨格や論文の図板を見る限り、頭骨の形状も結構違います。


 :
主な参考資料
・"Encyclopedia of Paleonherpetology Pelycosauris"
 Robert R. Reisz

・「哺乳類型爬虫類」(金子隆一 朝日選書

  (イラスト・文:ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)

2013年8月17日土曜日

ヘノドゥス Henodus


 ヘノドゥス ケリュオプス
 Henodus chelyops

全長 1m
ドイツ
三畳紀後期
一見カメのようですが、カメよりも首長竜に近縁の海棲爬虫類・板歯類の1種。板歯類というと馴染みが薄いかもしれませんが、同じ板歯類のプラコドゥス等と一緒に古生物図鑑で紹介される事も多いので、姿形には見覚えのある方も多いかも知れません。

板歯類の全身骨格は国内では見たことが無く、それを見る事は古生物好きとしての夢の一つでした。2011年には、ドイツ、ニューヨークと立て続けにその展示を見る事が出来、特にドイツ・チュービンゲンではこのヘノドゥスの実物化石とも対面。地味ながら素晴らしい展示に驚いたものです。

今回のイラストでは、以前製作したプセフォデルマキヤモドゥスと同じように、前肢をトカゲ型に表現しています。姿形からカメと同じような関節の曲がり方に表現されるのですが、カメとは甲羅のつくりや骨格が違う事と、それ故に手足が胴体内には引っ込みそうに無いため、一般的な肘の曲がり方にしてみました。

左・ヘノドゥス  右・プラコドゥス
(2011年 アメリカ自然史博物館にて撮影)


主な参考資料
・"Encyclopedia of Paleonherpetology  Sauropterygia1" O.Rieppel
  (イラスト・文:ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)


2013年6月28日金曜日

プロトケラトプス Protoceratops


 Protoceratops andrewsi
プロトケラトプス・アンドリュウシ
全長 約2m
モンゴル
白亜紀前期


代表的な初期の角竜の1種。子供から大人まで、数多くの化石が発見されています。角竜の特徴の一つであるクチバシと共に、小さなキバ状の歯も持っており、原始的な形態を残しています。

今回のイラストは、林原自然科学博物館により発掘され、組み立てられた骨格を元に描いています。
(2013年 「モンゴル恐竜化石展」にて撮影)
この組み立て骨格は非常に精度の高い復元・組み立て作業がされており、世界でもトップクラスの恐竜組み立て骨格かと。フリルの形状などから、メスと推測されているようです。


こちらは、ヴェロキラプトルと一緒に見つかった有名な闘争化石。
(2013年 「モンゴル恐竜化石展」にて撮影)


子供から大人までの頭骨を並べた、これも有名な展示
(2011年 ニューヨーク・アメリカ自然史博物館にて撮影)

私の子供の頃は、ロイ・チャップマン・アンドリュースの発掘隊がゴビ砂漠で世界で最初に発見した恐竜の卵化石は、このプロトケラトプスの卵、となっていましたが、現在では小型獣脚類・オヴィラプトルの卵と考えられているようです。


主な参考資料
・「モンゴル恐竜化石展」図録(2013)


(イラスト・文:ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)



2013年6月19日水曜日

シュヴウイア Shuvuuia

シュヴウイア デセルティ
Shuvuuia deserti

全長約60cm
モンゴル
白亜紀後期

前回紹介のモノニクスと同じ、アルバレッツサウルス類に属する恐竜です。モノニクスとの違いでもあり、またこのシュヴウイアの特徴でもあるのが、前肢の指です。第1指(親指)はモノニクスと同じように大型化していますが、第2指と第3指が非常に小さくなっていますが残っています。最初に発見された化石では第1指だけと見られていましたが、その後、林原自然科学博物館の発掘隊によって発見された化石により、第2指、第3指の存在が判りました。また、この発見により、モノニクス等、他のアルバレッツサウルス類にも小さな第2,3指があった可能性が示唆されています。さらに、このシュヴウイアはアルバレッツサウルス類の中でも、原始的な羽毛のような痕跡が見つかっている恐竜でもあります。
(3本指が確認できる標本・
大阪市立自然史博物館・特別展「モンゴル恐竜化石展」にて撮影)



主な参考資料
・"A new specimen of Shuvuuia deserti Chiappe et al., 1998, from the Mongolian Late Cretaceous with a discussion of the relationships of alvarezsaurids to other theropod dinosaurs."
Suzuki, S, L. Chiappe, G. Dyke, M. Watabe, R. Barsbold and K. Tsogtbaatar (2002).

・「モンゴル恐竜化石展」図録


 イラスト・文:ふらぎ



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2013年6月6日木曜日

モノニクス Mononykus


モノニクス オレクラヌス
Mononykus olecranus

全長: 90cm
発見地:モンゴル 
時代:白亜紀後期
 
獣脚類の中のアルバレッツサウルス類の1種。名前の由来通り、前肢には大型化した第一指(親指)の一本しか指がありません。この指の機能については、シロアリのアリ塚をこの指で壊し、シロアリを食べていた、という説が良く知られていますが、、まだはっきりとした事は判っていません。



モノニクス全身骨格復元
(アメリカ自然史博物館にて2011年撮影)


主な参考資料

・「恐竜王国2012」図録
・「恐竜博2005」図録
・「モンゴル恐竜化石展」図録
  (イラスト・文:ふらぎ


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2013年6月2日日曜日

イグアノドン Iguanodon (旧復元)

 Iguanodon bernissartensis
イグアノドン ベルニサルテンシス(旧復元)

全長: 8m
発見地:ベルギー(その他、ヨーロッパ)
時代:白亜紀前期
 
イグアノドンは最初に学名を付けられた恐竜です。その学名が付けられてしばらくは、鼻の上にサイのような角を持つ、いかにも「爬虫類」という姿で復元されていました。
そのイグアノドンの姿が、現在の復元に一気に近づいたのが最初のイグアノドンの発見から約50年後、1878年のベルギーのベルニサール炭鉱での発見でした。30体とも言われるイグアノドンの化石が見つかり、さらにその中には関節の繋がった状態、つまり生きていた時の姿に近い状態のものも多く含まれていました。この発見はイグアノドンだけでなく、恐竜全体の復元の研究を大きく進展させました。ここで発見された化石は、組み立てられベルギー王立自然科学博物館に展示される事になります。今回のイラストは、その展示骨格を基に描いたものです。


(ベルギー王立自然科学博物館にて2012年撮影)

現在の復元に近づいた、と解説しましたが、当時はまだ尻尾を引きずったカンガルー型・もしくは日本ではゴジラ型とも言われる復元スタイルが「最新」でもありました。このベルギーの展示もゴジラ型スタイルです。
2012年にベルギー王立自然科学博物館で、当時の復元のままのイグアノドンの展示を見た際、その化石の保存状態の見事さと共に、非常に精密に組み立てられた復元骨格に驚きました。もちろん復元としては古いスタイルなのですが、各関節が大きく外れる事もなく、また左右のバランスにも狂いが少ない、「綺麗」な骨格なのです。

現在の復元を基にした骨格にも精度の差、組み立て手法の差があるように、各年代での復元骨格、そしてイラストや模型にも精度の差があります。今回は、精度が高いと感じたベルギーの骨格に沿った復元を試みたらどうなるか、という主旨で描いています。


         (現在の復元を基にした作品 )





こちらは、ベルリン市立動物園内のアクアリウム前のイグアノドン像。1930年代の製作だそうですが、プロポーションや前肢の各指の長さの正確さや、顔がトカゲ型では無く、頭骨に近い形状&クチバシ状の口先など、非常に精度の高い造形で驚かされます。

:主な参考資料
・ベルギー王立自然科学博物館・ガイドブック

・特別展「イグアノドン」図録(1985年開催)

 (イラスト・文:ふらぎ

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2013年5月15日水曜日

ゲロトラックス Gerrothorax


 ゲロトラックス プルケッリムス
Gerrothorax pulcherrimus 

全長 約1m
ドイツ他 
三畳紀後期


マストドンサウルス等の大型両生類も属するステレオスポンデュリ類・プラギオサウルス類の1種です。 「眼が大きい」点が外見の特徴としてとりあげられる事が 多いのですが、本当にそれほど眼が大きかったのかな、と以前から不思議に思っています。確かに頭骨の眼の穴は大きいのですが、オオサンショウウオも同じように大きい眼の穴を持っていますが、眼自体は小さいですし、またゲロトラックスの頭骨の上下の厚みはそれほどなく、カエルのような眼球が入るようにも思えません。という事で、試しに「眼の小さいゲロトラックス」を 描いてみました。
また、標本を見る限り背中には小さな骨板が並んでいるため、イモリやサンショウウオのような柔らかい皮膚というより、ゴツゴツと硬そうな質感の皮膚をイメージしています。
下半身に関しては、標本にはその部分が欠けており、また骨格がわかる資料が手に入らなかったので、近縁種を元に想像しています。

(ドイツ・レーヴェントール博物館にて2011年撮影

学名の由来は「頑丈の胸」。その名の通り、胸部に大きな板状の骨を持っています。これはゲロトラックスと同じ分椎類のメトポサウルスやエリオプス等にも見られる特徴です。


:
主な参考資料
・"Gerrothorax pulcherrimus from the Upper Triassic Fleming Fjord Formation of East Greenland and a reassessment of head lifting in temnospondyl feeding".
Farish A. Jenkins, Jr., Neil H. Shubin, Stephen M. Gatesy & Anne Warren (2008).
 Journal of Vertebrate Paleontology

・"The Rise of Amphibians: 365 Million Years of Evolution" Robert Carroll

 (イラスト・文:ふらぎ



(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)


2013年5月13日月曜日

サモテリウム Samotherium



サモテリウム
Samotherium sp.
            
アフリカ・ヨーロッパ・アジア
後期中新世(778万年~625万年前)

 :
原始的なキリン科の1種。キリン科の中では、キリンよりもオカピに近い動物ですが、オカピのような森林ではなく、サバンナのような開けた場所で暮らしていたようです。キリンに比べると、前肢に対して後脚が長く、また頭の角の長さ・形状も違います。頭の角に関しては、種や性別よって長さや向きが違うようです。角の本数は、今回は中国で発見された保存状態の良い頭骨を元に、大きな角一対、その前の小さな角1対の計4本で描いています。

サモテリウムには複数の種が報告されていますが、今回は主に参考にした標本が、種に関してはSP.表記(種は不明)であったため、今回のイラストもそれにあわせています。


台湾・国立自然科学博物館特別展にて2013年撮影)

化石種のキリンの仲間に関しては、あまり標本展示を見る機会もなく、あっても頭骨くらいでしたので、この台湾での特別展で全身骨格を観る事が出来たのは嬉しかったですね。


主な参考資料
「新版・絶滅哺乳類図鑑」(丸善 冨田幸光著)
・台湾・国立自然科学博物館特別展「從龍到獸」展示キャプション


(イラスト・文:ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)

2013年4月3日水曜日

ジュラベナトル  Juravenator

 

ジュラベナトル スタルキ
Juravenator starki
全長 約80cm
発掘地 ドイツ
時代 白亜紀後期


コンプソグナトゥス類に属し、その中でもイタリアで見つかったスキピオニオクスと非常に近い系統と考えられています。また、発見された化石はヨーロッパでもトップクラスの保存状態の良い獣脚類の一つで、まだ子供の個体のようです。

発表当初は、尻尾の部分にウロコの痕跡が見られる事でも話題になりましたが、その後の紫外線下での観察で、ほぼウロコと同じ場所の背中側に原始的な羽毛と見られる痕跡が確認されています。今回のイラストも、その発表を基に背中側に羽毛(といっても、まだ硬い繊維状な感じに)、側面~腹側はウロコ、としてみました。

(ドイツ・ジュラ博物館にて2012年撮影)

主な参考資料
・"Re-evaluating Moodie's Opisthotonic-Posture Hypothesis in fossil vertebrates. Part I: Reptiles - The taphonomy of the bipedal dinosaurs Compsognathus longipes and Juravenator starki from the Solnhofen Archipelago (Jurassic, Germany).
Reisdorf, A.G., and Wuttke, M. (2012)
" Palaeobiodiversity and Palaeo.environments, 92(1): 119-168

 (イラスト・文:ふらぎ
 (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)

2013年3月22日金曜日

アロデスムス Allodesmus

 アロデスムス
Allodesmus.sp

全長 2~2.5m
日本・北米
中期中新世(1500~1000万年前)


日本や北米・カルフォルニアから化石が発見されている、絶滅した鰭脚類のデスマトフォカ科の1種です。。前肢の形状・長さ等、アシカに似た特徴を持っていますが、アシカよりもアザラシに近い系統とされています。

そのアシカに似た前肢が目立ちますが、頭骨も変わった形をしています。現生の鰭脚類に比べ、全体的に高さが低いように見えますし、また鼻孔の部分の形も特殊で、比較的似ているのはゾウアザラシかな、と。今回は、ヒョウアザラシ型(上)とゾウアザラシ型(下)の2種類の頭部で描いてみました。

昔の図鑑等で、鼻の部分がゾウアザラシのように大きく膨らんだアロデスムスの絵を見る事があり不思議に思っていたのですが、今回頭骨の形を見て納得したり。

現在、アロデスムスは複数種が報告されていますが、今回のイラストで主な参考にした国立科学博物館の展示骨格の表記に従い、種は確定しないAllodesmus.spとしました。


 アロデスムス全身骨格(国立科学博物館にて撮影)
 アロデスムスに関しては、Don Basilioさんの記事も是非。


主な参考資料
・「動物大百科2 海生哺乳類」
「RETURN TO THE SEA」 Annalisa Berta
「鰭脚類の起源と進化」. 米澤 隆弘. 甲能 直樹. 長谷川 政美.(統計数理 第56巻)
・「アロデスムスについて」広田清治(地団研専報 第43号)
・" San Diego Natural History Museum web site"

 (イラスト・文:ふらぎ

 (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)

2013年3月6日水曜日

バシロサウルス Basilosaurus

 
Basilosaurus cetoides
バシロサウルス ケトイデス

全長 約17m
 北米(ケトイデス以外の種は、エジプト、イギリス等)
始新世(約4000万年~3400万年前)

:
現在のクジラ類の先祖の系統と言われるムカシクジラ類の一種。学名には「サウルス」とありますが、これは最初の化石の発見時に爬虫類の一種とされ、それに基づき「トカゲの王」という意味で命名されたからです。

一番の特徴は長い胴体です。ですが、さらに詳細に見ると様々な部分が現在の鯨と違います。その一つが、退化し小さくはなっていますが、後ろ足の骨が残っている事。この骨の大きさから、まだ後足が外見からも見えていた可能性があります。また、頭部にも違いがあります。歯は、口の前半部では鋭い牙状、後半部では山型状という違う形状の歯を持っています。これは哺乳類の特徴ですが(異歯性)、進化したハクジラでは、歯の形の違いは無くなります。さらに頭部も現生の鯨とは違う形をしています。現生の鯨の中にはハクジラとヒゲクジラの2つに大きく分けられますが、その2つが現れるのはバシロサウルスの後になります。

今回のイラストはオーソドックスなスタイルで描いていますが、口の歯の露出に関しては、現生のハクジラを参考に、あまり歯が外に見えない表現にしています。歯がはっきり見えている表現もありますが、それでは口を閉じた時に、しっかり唇を閉じる事が出来ません。これについては、こちらのMarkus Buhler氏のドルドン(バシロサウルス科のクジラ。頭骨形状もバシロサウルスに似ています)についてのイラストが判り易いです(上が歯が露出した表現。下が歯が見えない、現生クジラに近い表現)。
また、今回はケトイデス種の骨格や資料を基に描いていますが、より標本が多く発見されているのはイシス種で、全長もより大きく20mを越えると推測されています。

バシロサウルスの全身骨格の展示は、世界的にもあまり多くは無いようですが、その中の一つが東京・国立科学博物館にあります。今回のイラストも顔の部分などは、科博の展示を参考に描きました。














バシロサウルス全身骨格
(東京・国立科学博物館にて2013年撮影)


主な参考資料
「RETURN TO THE SEA」 Annalisa Berta
「水辺で起きた大進化」 カール・ジンマー
「新版 絶滅哺乳類図鑑」
Explore Our Collections ”Basilosaurus"
   Smithsonian National museum of natural history

(イラスト・文:ふらぎ

 (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)

2013年2月15日金曜日

カリコテリウム(アニソドン) Chalicotherium (Anisodon.)

















Chalicotherium (Anisodon) grande
カリコテリウム(アニソドン)・グランデ

全長 約2m
ヨーロッパ
中新世中期


カリコテリウム類は、馬やサイ等を含む奇蹄類の仲間。その中でもこのカリコテリウムは前肢の長い特徴的なプロポーションで話題になる事も多い動物です。

カリコテリウムには複数の種が報告されていますが、一般的に「カリコテリウム」のイメージはH.Zapfe(1979)に掲載されているグランデ種の骨格図がベースにされていると思われます。ですが、その報告には2種類の全身骨格図が紹介されているにも関わらず、引用されるのは必ず同じもの(下画像左側)で、もう片方を引用した復元図等はほぼ見られません。確かに、もう一方の骨格図はどちらかと言えば不自然に見える復元ではあるのですが、、、。











Chalicotherium grande (BLAINV)」 H.Zapfe(1979)


今回は、基本的には一般的な骨格図をベースに、もう一方の骨格図や、その他の知見を元に若干修正した表現にしています。例えば、一般的な骨格図では前肢の指が「前へ倣え」状態で接地していますが、今回のイラストでは他の哺乳類と同じ手の甲が前を向く表現です。

また、このカリコテリウム属の代表と言っていいグランデ種ですが、最近の研究ではカリコテリウムではなくアニソドン属とする説が有力のようです。つまり、これまでカリコテリウムとしてイメージされていた姿はアニソドンのもので、真にカリコテリウムとなる動物は、また微妙に違った姿をしていたのかも知れません。

















 カリコテリウム科のモロプス全身骨格
(アメリカ自然史博物館にて2011年撮影)


主な参考資料
・「Mammoth, Sabertooths, and Hominidis」
・「新版 絶滅哺乳類図鑑」
・「Chalicotherium grande」H.zapfe
・"Feeding ecology of the Chalicotheriidae (Mammalia,Perissodactyla, Ancylopoda).
 Results from dental micro- and mesowear analyses"
 Ellen Schulz, Julia M. Fahlke, Gildas Merceron,& Thomas M. Kaiser,
・" The early Vallesian vertebrates of Atzelsdorf
(Late Miocene, Austria) 11. Rhinocerotidae and Chalicotheriidae (Perissodactyla)"
Kurt Heissig, 2008

(イラスト・文:ふらぎ
                                        (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures)

2013年2月1日金曜日

ヘスペロルニス Hesperornis 


ヘスペロルニス
Hesperornis 
北米
全長 最大 1.8m
白亜紀後期

:
恐竜が繁栄した中生代・白亜紀後期の、しかも歯のある鳥類としてイクチオルニスと共に古くから知られ、古生物図鑑の恐竜以外の常連の一つと言って良い化石鳥類です。翼は退化し、水かきのある後肢で水中に潜り魚等を捕らえる生活をしていたと考えられています。

前肢(翼)については、ヘスペロルニスに関しては上腕のみしか見つかっておらず、肘から先は確認されていません。恐らく肘から先は退化し、無くなってしまったと推測されています。今回のイラストではそれを基に前肢は羽毛に埋もれ、翼や腕が外側に露出しない表現にしています。

後肢の水かきは、指の間に膜のあるタイプではなく、カイツブリなどに見られる弁足タイプに、加えて後肢の踝までは羽毛に埋もれた(脛の部分が大きく横に飛び出ていない)表現です。














 カイツブリ剥製(神奈川県立生命の星・地球博物館にて撮影)



ヘスペロルニス全身骨格
アメリカ・ペロー自然科学博物館にて2015年撮影)

:
主な参考資料
「鳥の形態図鑑」 赤勘兵衛 偕成社
・「鳥の形とくらしⅡ」我孫子市鳥の博物館 企画展ガイド
・「鳥の骨探」 NTS
・「跗蹠骨の形態に基づくHesperornisの水掻きの形状についての検討」 
(青塚圭一・日本古生物学会2011年年会)


 (イラスト:ふらぎ  文:ふらぎ)
                                        (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2013年1月16日水曜日

クリオロフォサウルス  Cryolophosaurus



クリオロフォサウルス ・エッリオティ
Cryolophosaurus ellioti
南極大陸
全長 6~7m
ジュラ紀前期



このブログでクリオロフォサウルスを紹介するのは2回目です
前回の記事
前回は未発見部位を描かず、シルエットは以前主流であったアロサウルス類に近いもので表現しました。その後、ディロフォサウルス類に属するという説が有力になり、ディロフォサウルスのプロポーションに従った骨格図も発表されています。全身がより細身に、頭部もディロフォサウルスタイプの細い顔つきで表現されるのがここ数年の流れで、今回のイラストもそれに従って描いています。また、カナダで開催された特別展で展示された骨格には、新しく復元された頭骨が使用されていたように見えます>参考。今回参考にした骨格図と、この組み立て骨格ではプロポーションに違いがあるので、そのあたりも今後どうなるか気になる所です。
 羽毛に関しては、ディロフォサウルスの物といわれている羽毛の痕跡が報告されている事を参考にしていますが、あくまで想像の域は出ません。体の大きさや、当時の南極が比較的暖かい気候であった事を考慮すると、羽毛はもっと少なかった事も考えられます。
 



ディロフォサウルス骨格(「恐竜王国2012」にて撮影)


主な参考資料
・ "The Dinosaurs of the Early Jurassic Hanson Formation of the Central Transantarctic Mountains: Phylogenetic Review and Synthesis"(2007)
N. D. Smith, P. J. Makovicky, D. Pol, W. R. Hammer, and P. J. Currie

 (イラスト:ふらぎ  文:ふらぎ)
                                        (恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)